おはな日記(3) by Ryu

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Written;2002/11/23 Ryu---オレ-!!!(Ole)---

■ああ地中海、これが地中海、きれいだね地中海

すったもんだのあげく、日本から送った「お花と宗一郎」にようやく跨ることができたボク達は、バルセロナを後にすることにした。

まずは、同じ宿で友人になったミンジさんの住むグラナダまでの1000キロの旅。スペインの北部カタル-ニャから、アンダルシア地方に南下していく。50キロ、100キロと進にしたがって、ボクの目に写る景色は、肌に風が暖かく感じたのと同時にどんどん変化する。

畑の赤い土と、その畑をしきるのに積まれた石の茶色と、そこに植えられたオリ-ブの木の緑と、真上に見える空の青と、ぽっかりとうかぶ雲の真っ白と、遠くに見える家のひかめな白と、そのもっと遠くに見える海の青。どうしたらいいのか、わかなくなる程きれいな景色に戸惑いながら、そばを走る自転車よりも、ゆっくりと、ホントゆっくりとボク達は2台のバイクを走らせた。

とめては走り、走ってはとまり。カメラに景色を収めたり、ただ景色を眺めたり。ボク達はその水にさわることなく地中海に溺れた。

■アルバイシンの家

アラブとヨ-ロッパ、ムスリムとクリスチャン。世界遺産に登録されたアルハンブラ宮殿と、その昔アラブの人たちが住んでいたアルバイシン地区のある歴史ある街。

その地区の古い家を買い取った日本人女性がいるという。そして、ボク達はその家の改築の手伝いをすることを条件に住んでいるミンジさんにバルセロナの安宿で出会い、この旅の途中で彼の住むその家を訪れる約束をした。

煉瓦のような赤茶色の造りで、グラナダの街全体が見下ろせる丘の上に建てられたアルハンブラ宮殿を右手にみながら細い石畳の路地をぐちゃぐちゃに曲がりくねりながら歩いて登って、ボクの鼓動がほんのちょっと早くなりかけたころに、やっと案内されてその門をくぐった。

アルバイシンの家で
その日その家に案内されたのは、ボク達を含めて9人。バルセロナの安宿で偶然に出会った旅人がミンジさんの誘いでグラナダにやってきた。それは、多分、なんというか彼のあの人柄に何かを感じてなのか、とにかく、そこにたくさん人が集まった。

廃屋になりかけた古いアラブ式の煉瓦の家をコツコツと改装しているところだから、外は雨で湿気はあるし、隙間風は入ってくるし、暖炉に薪をどんなにくべても全然寒いし、なのに酒を飲みながら朝までやった。どんどん薪をくべて、どんどん酒を飲んで、どんどん色んな話をして、どんどん夜が更けていく。それは、それは、とてもいい時間。

そういえば、ボクが20才前だった17~18才の頃、似たようなこんな時間があったなぁと、ホテルに戻る道すがら、雨で濡れた石畳がツルツルで、こけないようにとそっと歩いたアルバイシンの急坂を、下ったところで立ち止まり、午前4時を指した腕時計をみながら思った。

考えたり、ちょっと悩んだり、それでも楽しくて笑ったり、なんか、いろいろ、ごちゃごちゃのいい時間。

■ヒタ-ノ(Gitano)

「アンダルシア地方がフラメンコ発祥の地なんですよ。ここに流れてきたジプシ-達が作った音楽なんです。このアルバイシンにもジプシ-達がたくさん住んでいて、バ-ル(Bar)で自分たちが楽しむためによくやってますよ」。

ちなみにジプシ-のことをスペイン語では、「ヒタ-ノ」(Gitano)と言うらしい。ボク達は、ミンジさんの案内で、彼らが楽しみながらやっているバ-ル(Bar)を求めて、夜更けのアルバイシンを歩いた。しかし、雨のせいか、どこにいっても彼らの姿はなく、いくつかあるバ-ルのうちの山の斜面をくり貫いた洞窟のような店に入った。

モルタルなのか、セメンとなのか、壁と天井をいちど何かで固めたあとに、白い水性ペンキで塗られた店は、ろうそくと裸電球だけで照らされて、なんとなくオレンジ色で、壁には闘牛の写真とフラメンコを踊る女性の写真と店の親父がギタ-を弾く写真が色々掛けられている。

そのうち、店の親父がギタ-を持ってボク達の席の側にきて、ボロンボロンと弾きだした。しかめっ面でまっすぐ前をみながら弾き出した。そのうち、店のなかの客が集まりだして、親父を囲んで手をたたき、ひとりの女性が踊り出す。ボロンボロンがジャガジャン、ジャカジャンになって、みんなの手拍子がどんどん激しくなっていく。

時計をみるとまた3時。アルバイシンの夜はホントに長い。



■ガンダ-ラ

モロッコ人のやってるシャイ屋で、日本人ギタ-リストが帰国前にライブをするからと言うので見に行った。ボク達が、そのアラビックの装飾品で飾られた店に入ると、すでに中央で背中まで伸びた黒い髪の男と床に座り込んだ男、2人がギタ-とインドの太鼓ですでに演奏を始めていた。

昨日聞いたフラメンコギタ-とは少し違うリズムで、それでも、ギタ-を弾く彼の両手の指は、確実にそれぞれの音を奏でる弦を捉えてはメロディ-にしていく。その側で、床に座り込み、うつむき加減でもう一人の彼が太鼓を叩く。

ギタ-と太鼓。フラメンコの国に東洋人。そして奏でる曲はフラメンコではなく彼ら独自の音楽。どれもこれも不釣り合いで、一見、バランスが悪く感じられるのに、目を閉じて聞き込んでいくと彼らの世界が見えてくる。

そして、彼らの演奏する何曲目かで、ボクの中に何もない荒涼とした土地を旅する男の姿が映し出され、その男の物語が始まった。男は旅を続け、その曲は、優しく、寂しく終わりへと近づいてゆく。



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