おはな日記(4) by Ryu

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Written;2002/12/1 Ryu---Salud!---

◇ボクの頭のなかで、アメリカのサンフランシスコでの出来事と、ここスペインのグラナダでの出来事がひとつにくっついた。ジグソーパズルが完成まであと20とか10ピースくらいの勢いで、「ああ、なるほど。ああ、なるほど」と、くっついていくのでボクの頭の中は、グルグルといつになく回転数が相当に高い。

●銀のユニコーン ----アメリカ・サンフランシスコでのお話----

ボクの右手がアメリカで変になってきた。そのことに気がついたのは、サンフランシスコにあるアルマニという町で毎週日曜に開催される「のみの市」でだ。

そこは、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなところで、ジーンズにシルバーのアクセサリー、絵や木彫りの人形にチャイニーズの怪しげな置物。使えなさそうな鍋や電化製品があるかと思うと、古き良きアメリカを思い起こさせる骨董品のお店などが、全部でおよそ200店ほどが集まってきている。ボク達は一度でそこが気に入り、アメリカにいる間、時間があればそこに通うようになっていた。

2度目に行ったある日のこと、ボクは何日も続いている夢の意味を考えながら「のみの市」をぶらついていた。空には薄く雲がかかりすこし肌寒い。車を降りてからボクの腕には鳥肌が立っていた。でもそれは、おかしな事に右腕だけで、なんともない左腕を見て少し変な気もした。

しばらくすると、彼女がシルバーの凄い細工のブローチを見つけたと言って来た。どれどれと、そのモノが置いてあるお店に行ってみると、なるほど、どれがそれと言われなくてもわかるくらい存在感のある銀のユニコーンがあった。沢山のアクセサリーが詰め込まれたガラスのケースから出してもらい手に取ると、ボクの右腕の毛が逆立ちが鳥肌がさっきよりもすごくなる。

すると不意に右腕が少し震え、そのあとから、窓際に置かれた木の机の上で、眼鏡かけ分厚い木綿でできたエプロンをつけた白髪の男性が細工をする姿が目に浮かんだ。そして、その窓の外には石畳の路地裏の景色が見えた気がした。

店の主人に値段を聞くと、ボク達には少し高い買い物だった。諦めて一度は店を離れたが、帰り間際に彼女があの店に寄ってみたいという。それは彼女だけでなく、ボクもそうしたかった。

もう一度、店の主人が銀のユニコーンをケースから出して彼女の手のひらに置いてくれた。すると、またボクの右腕が震え、今度は白髪の男性がエプロンを外してボク達にお辞儀をしてくれる姿が浮かんだ。

そして、銀のユニコーンがボク達のモノになった。

(7/2/2002)



●銀細工の机 ----スペイン・グラナダでのお話----

グラナダに着いたのは、11月半ばだったから、もう、かれこれ、2週間ここにいることになる。この時期、グラナダは雨が続くそうだ。現に、ボクのこの目で晴れた空を見たのは、こんなにいるのに2、3日で、にも関わらずここにいるのは、アルバイシンの街並みとその家に住む、ミンジさんにユウくんと、その家の持ち主のユ-コさんと、そこに集まるみんなが気に入るどころか、大好きになったからだ。

今年の3月から6月まで、ボク達はアメリカに行っていた。「銀のユニコ-ン」のお話は、その時のもので、ボクの中では、もう終わったものとしてその記憶から遠ざかっていた。大体、白髪のおじいさんが、白人なのに、なぜか日本人のようにお辞儀をしてくたのは、ボク達が、それを買ったからで、まさか、その続きがあることなんて知る由もなかった。

銀細工の机
降り続く雨の中、ユ-コさんの家が気に入ったボク達は、ほぼ毎日、そこに通いつめた。そのうち、工事中のその家のあちこちに目がいくようになって、ある日、銀細工職人が使う机がそこにあることに気がついた。それでも、ボクは、グラナダの歴史からいって、この家には、アラブ系かジプシ-系の人達しか住んでいなかった筈だからと気にも留めなかったし、もう、そろそろグラナダを離れようかと思い出したある日、なかなか逢う機会のなかったユ-コさんに、初めてあったその時でさえ、その机のことはボクの頭の中から消えていた。

そして、2回目に逢ったそのとき、工事中のバスルームの扉の前で、ふと思い出した銀細工の机のことを聞いてみた。

◇「あの銀細工の机は?」
◆「そう、ここには銀細工の職人さんが住んでいたの」

◇「白人ですか」
◆「そう、スペイン人よ」

◇「どの部屋に置いてありました」
◆「1階の道沿いの部屋。そうそう、その部屋の中にね金閣寺の写真が貼ってあったの」
◇「親日家だったんですね」

アルバイシンの路地
まるで、日本人のようにお辞儀をする白人のおじいさん、細い石畳の路地裏の景色、そして、目の前にある銀細工の机。ボクのなかに、あの白髪のおじいさんが、コンコン、カンカンとユニコーンをつくる姿が、浮かんでは消え、消えては浮かんだ。







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※そして、この次の日から、ボク達は1週間滞在したホテルを出て、アルバイシンのユーコさんの家で宿をとらせて貰うことになりました。その夜、もちろんボクは、夢の中で、ワインが大好きだったおじいさんの色んな思い出話を聞きながら、朝が来るまで飲み明かしたのは言うまでもありません。ユーコさん、ミンジさん、ユーくん、グラナダで出会えたみなさん、本当にありがとうざいました。そして、この出会いをプレゼントしてくれたおじいさんに「Salud!(乾杯)」。
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