おはな日記(6) by Ryu

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Written;2003/1/8 Ryu---Morocco No.2---

●Morocco <雑感>
◇皆さん、明けましておめでとうございます。今年の年越し、ボク達はタフルートというモロッコの山間のすばらしく美しい町で過ごしました。おせちや、雑煮がないのはもちろんですが、町がいつもとまったく変わらず動いている様子をみていると、ラマダン中心で一年を送るイスラムの国にいることを実感しました。

砂漠の風紋
◇サハラ砂漠には、その土地を守る「砂の人」がいるような気がします。「砂の人」とは、ボクがその気配を感じて勝手にそう言っているだけで、そこが山なら「山の人」、滝なら「滝の人」ということになるのでしょうが、とにかく、深夜に小便をしたくてテントの外にでて、地平線までびっしり詰まった星空に見とれているとき、その気配を感じました。

◇いまいるダクラの街から、モーリタニアまで、あとわずか。もうすぐ、サハラを越えます。

●そう言えば昔、ギャンブルにはまってた
面白いからと連れられた初めての競馬で、2千円を50万円にしたことがある。

ボクのケツの青いのが青すぎる二十歳そこそこの頃だっただけに、こんなに簡単に 大金が手に入るんだったらと、パチンコ、麻雀、競艇、競輪、一通りこなした頃には、 いっぱしの博徒になった気分で、そこから、しばらくギャンブルがやめられなくなった。

それで、話はマラケシュでの買い物のことになる。

まるで迷路のような、というより本当は迷路だろうと思わせるように無茶苦茶に入り乱れた 細い路地の両脇に、びっしり、ぎゅうぎゅう詰めに店が立ち並ぶ。いちおうアーケードにな ってはいるものの、その天井の至る所から太陽の光が漏れて、店に吊るされたベルベル人の 絨毯や、赤や黄色や紫の色とりどりに染め抜かれた布地を照らす。ボク達は、アラブ諸国中 最大と言われるこのマラケシュのスークで自分たちのために土産を買うことにした。

◆「いくらだ?」
◇「これは、ベルベルの絨毯で作ってあるアンティークでこんなに丈夫だから300ディラハムだ」。

モロッコに限らずアラブ諸国での買い物はポーカーやブラックジャックのカードに似ている。

◆「そんなに高いのはいらない、じゃ」
◇「待て待て、いくらなら買うんだ。ねだんを言ってくれ」

と、ここから、交渉が始まって、まずは、言い値の半額か3分の1の値段で探りを入れ相手の顔色を見てみる。その値段に怒ったように「帰れ!」と真剣に怒鳴る奴。なんとか売ろうと値段を下げてくる奴。これでどうだ、これでどうだの繰り返しを、2つ3つの店でやると物の値段が見えてくる。

そして、自分の思った値段でそれを手に入れたときは、あのギャンブルで勝ったときの気分に似たものがあるなぁと、それにはまった頃の自分を思い出した。

ただし、本当に勝ったか負けたかはディーラー役の店のオヤジしか知らない。

●サハラ
サハラ砂漠はなんとも言えず美しく、そこに来る人を必ず魅了する。

ボクは、ボクの知るサハラを体験した多くの友人知人からこう聞いていた。誰もサハラの悪口を言わないから、きっとボクもそこで言葉を失うほどの感動をするに違いない。いや、ここまで来たんだから、しないと困ると思っていた。

モロッコの西岸は、広大なサハラ砂漠を越えるための「西サハラルート」と呼ばれ、その道は、緑がなくなりあたりが砂の景色になってから、国境を越えてモーリタニアに入るまで1000キロを軽く越える。冬とは言っても日中の日差しは強く、あまりの強さに慣れるまでの2日ほど頭痛がとれずに困った。だから、ボクのサハラに対する第一印象は、〈なにが、サハラや、砂ばっかりで暑いだけやないか〉と、あまり良くない。

実際、西サハラルートの砂漠は、海岸線のためのか、砂というより土に近く、サラサラとした赤茶けたあの感じはないが、そのルートから、少し中に入るととんでもない景色を見ることになる。

クタクタになりながらのサハラ初日。国道から、脇に入る砂利道をトコトコと5キロ程入り、噂に聞いたキャンプ場に到着するなり、やっと期待通りにボクは言葉を無くした。遠い昔は、とんでもなく広い湖だった筈のストンと切り落ちた崖に囲まれたその土地は、いまは、砂漠で赤茶けて、遠く山のように見えるこの湖の浮島も、なにもかもがサハラになっている。

サハラの日の出
そして、翌朝。カメラをもって一人テントを出て辺りを歩く。東の空には太陽が、〈出るぞ、出るぞ、もうすぐ出るぞ〉と、空をオレンジ色に染めている。高台に登ってこの朝日に包まれたキャンプ場を一望してから、さらに歩く。光を浴びた、そこにある砂も、石ころも、草も木も、この目に飛び込んでくるすべてが、〈おい、そのカメラで撮ってくれ〉とボクに声をかけてくる。

〈成る程、みんなの言う、これが、それか〉ボクはこの朝、何十回、何百回と言葉を失い、そして、たっぷりサハラを堪能した。

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