おはな日記(8) by Ryu

Diary Top
<< 前へ | 次へ >>

Written;2003/02/03 Ryu---Mauritania No.2---

●Mauritania <雑感>
<サハラ越え ヌアディブ~ヌアクショット>
◇サハラは難所とは聞いていたが、これほどまでとは思わなかった。当初の予定では2泊3日が、3泊4日になって、たった1日延びただけだが、これが相当にきつかった。ボクの日記は珍しく何行も書かれ、その筆圧ときたら尋常でない。真っ黒になったその数ページに及ぶ日記をここに写して書きたいぐらいだが、それはそれ、帰国後の楽しみにとっておきたい。

◇ちなみに、その4日間の走行距離は、1月15日がヌアディブからモロッコ国境に向けて北に50km、そのあと東に70kmで合計120km。明けて、1月16日は、やや東よりに南へ10km。100kmの書き間違いではなく、この日はスタックの連続で本当に10kmしか進めなかった。そして、本来なら最終日の筈の1月17日は、南へ100km。目的地のヌアクショットまでまだまだ遠い。その翌日の1月18日、最後の砂丘を越えてアルガン国立公園のある海岸沿いを走ってようやくヌアクショットにたどり着く。この日の走行距離240km。合計たったの470kmを4日間もかけて走ったことになる。

●楽しめば、サハラ
サハラは人の来るのを拒む場所で、モーリタニアに住む人でさえその砂に埋もれて命を落とすことがあるというのに、そのサハラを20tと15tもあるカミオンで、4WDならまだしも、2WDで越えるなど狂気の沙汰で、馬鹿も休み休みだ。

スタック
車重があればあるほど、積もりたての雪よりも質の悪いサハラの砂は、まるで、底無し沼のように、タイヤどころか車ごと飲み込む勢いで襲いかかる。そりゃそうだ。そんな子どもでも分かるような理屈を、何十回もここを越えたという男たちは分かっていないんじゃないか?

ステファン・バットの運転するブルー・カミオンは20tの車重に加え、スペアタイヤに車のパーツ、そしてボク達のバイク2台を積載したものだから、その重さのせいで、昼にキャンプ地を出発して1時間も経たないうちにスタックを繰り返しだした。抜け出せない原因の発端はボク達にもある。だから、誰よりも沢山砂をかき出し、誰よりも遠くへ車を押し続けようとした最初の元気は、アッという間だった。

タイヤ交換作業
砂丘のとんでもなく深い砂は、ボク達の行く手を阻み何度トライしてもスタックを繰り返す。カミオンのシャフトまで埋もれた砂を素手でかき出しながら、ついには、こんな男たちと来るんじゃなかったとまで思いだした。北から強く吹く風は砂をまき上げ、口や目や鼻のどこもかもを隠しておきたいぐらいで、ただ立っているだけでも辛いのに、そのうえに、砂をかき出し、カミオンをただひたすら押しまくる作業の連続でボクは泣きたいぐらいヘトヘトになっていた。

日が傾きだしたころ、少し休もうと砂のうえに大の字をかいて寝転がり、その横目でみんなを見て驚いた。ダニエルもヴァンもジャンポールもみんな笑ってる。心底楽しそうに砂をかき出し、スコップを持ち、まったく懲りた様子がない。<少し、肩に力が入りすぎていたのか>と、一緒にみんなと笑うことにした。そして、サハラを楽しむことにした。

走行中の車内
数えれないくらい押しまくった何回目かのトライで、ようやくブルーカミオンが砂のうえを滑り出し、「Aller! Aller!(行け!行け!)」の掛け声が、「C`est bon!(よしっ!)」になったとき、ボクは両手をあげてみんなと叫び、みんなと抱き合った。 〈楽しめば、なんとかなるもんだ。〉段々と遠くに見えるカミオンの後ろ姿をみながら、こう思った。

<< 前へ | 次へ >>
Diary Top
Back to Top