おはな日記(17) by Ryu

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Written;2003/05/07 Ryu---Ghana---

●Ghana <雑感>
《(Burkina)Bobo-Dioulasso~(Ghana)Bolgatanga》
ガーナの国道
◇ボク達の旅の前半戦を終える国ガーナ。半年かけてそのガーナにやっと入国する。うわさに聞く通り、"これからドンドン発展するゾ!"という意気込みは、国境から「Bolgatanga」に続くその道路からも見て取れる。〈道にゴミはないし、こりゃ、スペインよりええ道やないか〉バイクを走らせながら、そんなことを思った。

《Bolgatanga~Accra》
◇〈はやく、首都の「Accra」に行かないと〉思いながら、いつものようについつい長居してしまう。「Bolgatanga」というこの田舎町で、結局6泊したボク達がその間なにをしていたかというと、地元でツーリスト相手に土産物屋をしているラスタマンの「ピーター」のところに入り浸っていた。それまで、ラスタマンといえば、「ボブ・マーリー」、「レゲエ」、「ドレッドヘア」、「ガンジャ」くらいしか知らなかったボクは、彼を通して色々とそのことを教えてもらった。アフリカの黒人皇帝 Haile Serassie、その皇帝の幼名【Ras Tafari】がRastafarismの語源となっていること。そして、 Rastafarismを信じる人を、Rastafarianやラスタマンということや、菜食主義で肉を食べてはいけない。あの髪の毛にしても、生まれたままの自然な姿を守り、櫛でさえとかしてはいけないから、などなど、〈ほう、ただの流行やないんや〉と初めて知った。

ピーター

◇「雨にまいった」。「Bolgatanga」~「Tamale」に向かう途中でおそろしい大雨にあう。〈やばいな、くるぞ、降るぞ〉と誰がどうみてもわかる真っ黒で重く垂れ下がった雲が、東の空から雷といっしょにやってくる。バイクをとめて、合羽を着込み、動かずにその雲が通り過ぎるのを、ただ、じっとそこで待っていた。どんどん、ばかばか、じゃんじゃん降る雨に合羽のなかまで濡れていく。アスファルトの道から外れたその端は、見る見るうちに水溜まりができていき、大地が「もう飲めません、勘弁してください」。と草々に降参すると、雨水はその次にどこかにめがけて、ガンガンと流れ出す。〈おいおい、ちょっとやりすぎちゃうか、雨〉と思っていたが、小雨になって、雨がやんで驚いた。乾いて土色だった道端から、にょきにょき、ぼこぼこと草の芽がでて、あたりがみるみるうちに緑に変わっていく。〈ほんま、かいな〉とパチクリしたがなんどやっても、そうなので、〈ほう、なかなか、やるな雨〉と、そのせいでビショビショに濡れた服のこともほとんど忘れて、しばらく、じっと、その様子に見とれてた。

◇「Kintampo」という町のすぐ近くに滝がある。地元の人たちが涼みに来る場所で、ボク達が行ったその日もたいそうな人で、水浴びをするお兄ちゃん、お姉ちゃんでいっぱい。雨季が始まったといっても、ガーナが暑いのには変わりなく、日中はむしむしとして軽く30度は超えている。そんな中での水浴びだから、楽しくないわけがない。30mほど上から落ちてくる水は、飛沫をあげて、あたりに飛び散りまわりの空気をひんやりさせる。〈こら、ここにおるだけで気持ちええわ〉としばらく、水浴びをただみていたが、そのうちムズムズしてきて、みんなのところに飛び込んだ。「どりゃー、こりゃー、おりゃー」と、ボクの入ってくるのを待っていたかのように、水を掛け合い自己紹介から始まって、「こっちこっち」と、天然岩の滑り台に案内されて、「どりゃー、こりゃー、おりゃー」と滑りまくった。

キンタンポの滝

◇「Kintampo」から「Kumasi」に向かう途中のアスファルト道路を少し離れたガーナの村の風景は、赤い土の地道で、その土を泥にして作った家の壁に、屋根の上は何かの草か葉っぱで葺いている。村のまわりは、サバンナだった昨日の景色から、とんでもなくガラッと変わって鬱蒼とした木々で覆われた熱帯雨林のジャングル。その緑はこの目に突き刺さるように鮮やかで、赤い道や赤い家の壁との相性も良い。〈こんなに景色がかわると別の国に来たみたいやなぁ〉と、ボクは、2度楽しめるガーナの風景を見ながら、疲れを忘れてどんどんバイクを走らせた。

●土地の持つ力
また、頭が痛くなった。

ボクは、ある土地には「力」があると思っている。そしてその力が、ボクの頭の容量を超えると、いつも頭痛をおこしてしまう。「怖山」に「御岳山」、ボクの大好きな「阿蘇山」でもそうだった。たくさんの人の思いと願いが集まる場所ほど、そのたくさんがもとで頭が痛くなってしまう。だったら、そんなことも、考えずに〈ああ、きれいやなぁ〉、〈たのしいなぁ〉、〈来てよかったなぁ〉だけ思っていればいいのに、そうは問屋が卸してくれないのが、力のある土地で、そんな時、ボクは、ただただ、ひっくりかえってそれが治まるのを待つしか方法を知らない。

「Bolgatanga」の町から、そう離れていないところに「Tongo」という村がある。もう何十年か、何百年も昔の奴隷貿易が盛んだったころ、白人たちの奴隷狩りを逃れて丘のうえの岩場に隠れて住んだ部族の村で、いまは、道路も整備されて、バイクや車で行き来はできるが、つい少し前までは、そこへの交通手段は歩くのみだったから、彼らの伝統宗教も、生活習慣も、何もかもが結局そのおかげで、いまのいままで守られた。

辺りの景色は折り重なる岩とサバンナの木々、複雑につなぎ合わされた家々。そして、岩場の高台には、彼らの聖地である岩の神殿がある。遠く海外からも、ここの力を信じてその願いを叶えて貰おうとやってくるくらいだから、その力は本物で、お願いばかりして、あとに御礼参りがちゃんとされない日本の神社と違って、叶うと必ず「ロバ」の生け贄をささげてたうえに、年に一度の祭りも盛大だから、その力も衰えることがない。

トンゴビレッジ トンゴの家

「ここに呼ばれたから来たんや」。この村の「Chief」と呼ばれる一番偉い人にその目的を聞かれて、ボクは「こめかみ」を押さえながら、こう答えた。そのあと、「なんとか、かんとか」と色々言われたみたいだが、ボクは頭が痛くて、残念ながらその時の記憶はない。記憶があるのは、神殿と呼ばれる高台の岩場に、ゼイゼイ、ハァハァと登って着いて、「ここから先は、上着を脱いで、ズボンは膝上まで捲り上げて、はいはい、その時計も外してね」。と参拝のお作法を教えて貰ったあたりからで、やっと神殿に入ってからからは、この聖地を守る神官に言われるままに、岩の隙間にぺたりと寝転がった。そして、この時も、折角だから、「何か質問することはないか?」とか、この村やこの神殿のことを「なんとか、かんとか」と色々説明してくれたが、 残念ながら、そこまで細かい記憶はない。

トンゴチーフ

やっと、頭の痛いのがとれた。いや、とって貰った。岩場でいつものようにひっくりかえって、しばらく、ボクのなかに飛び込んでくる色んな情報が、かすれてうすくなり始めるのをただじっと待っていた。いつもと違ったのはこの後で、不意に白い布を纏って優しい目をした黒人女性が、ちらちらと浮かびはじめた。こめかみに、ごつくて太い木ネジをギリギリとねじ込んだような痛みは、そこから少しづつ和らぎ、女性のはっきりとした姿が浮かんだと同時に消えた。〈ふぅ、やっと治まったかぁ〉、〈さぁ、色々聞きたいなぁ〉と思ったころにはもう終わりの時間で、結局、呼ばれて来たはずの「Tongo」の村での思い出は、色々説明してもらって全然記憶にない「なんとか、かんとか」と、頭が痛かったのと、「白い布を纏った黒人女性」しかない。

トンゴの神殿

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